詳説日本史

とかいう大学受験用の詳しいテキストがあったので、読んでいた。特に明治以降の政治史に注目し、藩閥と政党の妥協、桂園時代、二回の護憲運動、政党政治とその挫折を見渡した。特に、外交面では日露戦争以来の満州利権と国民革命軍の北伐との衝突、1次大戦後における日英同盟の破棄以来の英米との関係悪化、内政面では労働問題・農村の衰亡・金解禁問題といった、種々の課題において政党内閣が失敗を繰り返し、かつ政友会と民政党が公論を置き去りに党利党略のために対立した構図が目に見えた。
結果として、漁夫の利を得た形の軍人が満州事変という越権行為を引き起こし、政府もそれを追認、さらに日中戦争という目的が不明確な侵略戦争を引き起こし政府はまたそれに引きずられ、かつ近衛首相がそれを煽るという構図となり、そのまま悪夢の大東亜戦争へと突き進んだというのがよく分かった。
この大東亜戦争に関しては、英米とのアジア覇権戦争であったと言える。それはワシントン体制というものが、自分達は広大な植民地を保有したまま帝国主義を維持し、日独伊のような後発の帝国主義国に関しては帝国主義を許さないというダブルスタンダードにのった虚空の欺瞞に満ちた秩序であったからだ。つまり、この秩序を以ってして日本を責める議論はナンセンスであると思う。実際、英米仏蘭に関しては、東南アジアに植民地を有しており、手放すつもりはさらさらなかったのである。具体的には英国はインド、ビルマ、仏国はベトナム、蘭国はインドネシア、米国はフィリピンといった具合である。そうすると、結局この戦争は帝国主義国同士が植民地解放という自己矛盾した錦の御旗を掲げて戦った戦争であったと言えるのだと思う。
しかし、侵略された側にとってはたまらない。特に中国は国内体制が整わないまま、日本の無遠慮な侵略にさらされ、自国民を殺傷されたことが未だに傷となるのも当然である。この点、満州利権を防衛するためだったという議論があるが、確かにこの面があるにしても過剰な防衛だったことは否定できないのである。
結局、第二次世界大戦は世界を覆っていた帝国主義(武力によって植民地を獲得し、原料供給地又は自国製品を輸出する市場として使う政策)を終わらせる戦争であったと考えられる。その対価はそれにしても重いものだったと思わざるをえない。