「政治破壊小泉改革とは何か」日経新聞政治部編

発行が3年前の9月つまりは平成13年である。当時私は大学2年生で、大学のサークルで政治談議が流行っていたのもあって、相当政治にのめりこんでいた。
そんなことはどうでもいいが、この本小泉首相が誕生した当時の様子を克明に思い起こすことができる非常に面白い本である。小泉総理誕生までの経緯が説明されている本であるが、小泉首相誕生前の自民党が公党たりえなくなり各特殊利益を代弁した私党といえるまで腐敗していたかを示す本である。
小泉政権になっての一番大きい政策転換は放漫財政路線から徹底した歳出カットを行う均衡財政路線への転換であった。国債発行30兆円枠を設定し、族議員を抑え込むことに成功し、旧来の派閥順送り人事を排することと合わせて、旧来の自民党の利益誘導政治との決別を行った。
さらに、経済重視の名の下曖昧にされ続けてきた外交安保政策、クニの根幹を支える問題に一定の方向性を示した功績があると思う。外交安保では、自衛隊を軍として位置づけ憲法改正の必要性を明言し、日米同盟を強固とし国際社会に日本の力を示すためのイラク派兵を行った。さらに靖国神社に参拝し、国家のために命を捧げた人々を慰霊追悼するという意義ある行為を行った。戦後日本人が軽視してきた日本人たる誇りを重視した、ゆがんだ戦後政治の総決算を行おうというしている姿勢は賞賛に値する。
非武装中立や結果平等主義などの空疎な虚構を否定し、現実に国民の命と経済に責任を持とうというまっとうな路線が確立されたことが何よりこの内閣の功績であろうと思う。
今、日本に必要なのは自然法と自由を守る憲政への確信であり、日本の成熟した社会秩序への感謝の精神である。日本に欠けているのは現代の日本を作り出した、立憲民主主義、資本主義、そしてその基盤たる勤勉で優秀な国民性を持つ日本文化への自信と誇りであり、我々は日本文化への誇りを旨により社会の効率化、発展へ向けて努力し続けなければならないのである。そのためには、各人が私心を捨て、公のために何ができるかを考えなければならない。この道こそが唯一日本が今後も発展するために不可欠な道である。
要するに、これからの日本人は自らの歩んできた結果の功績を正しく評価し、自信を持つと同時に、足らざる部分の手当てを実行していくことが必要なのである。精神を病んだり犯罪を起こす若者や、何もしないニートなどに必要なのは、職業支援などではない。それは、働く意義であり、崇高な目的である。日本は確かにインフラが整い、人々は公正で親切だ。だが、しかし足りない物はいくらでもあるはずだ。行政経費の無駄遣い、年金の将来像、より魅力的なコンテンツ、より安価で良質な車、電化製品、より美味しい食品、そして良質な介護サービス等々いくらでも人間社会のニーズ、足らざる部分はあるはずなのである。それを国民それぞれが分担して、どんどんそれを満たしていく。これが生産力であり、日本国家の発展につながるのである。この意義付けをないがしろにするために、人々は右往左往し、目的意識を失っているのである。我々は日本国民として先祖代々が積み重ねてきた功績をさらに増幅する義務を負っているのである。