こころ

不思議なものである。悲しみが心をしめていて、何をしてもそれほど面白いとは思えない。

祖父は第二高等学校から東京帝大法学部を卒業し日本興行銀行(現みずほ銀行)に入行。その後、戦争になり、帝国海軍では東南アジアあたりで高射砲を担当の大尉だったそうで、終戦時に、オーストラリア軍に武器を引き渡す責任者をやったそうだ。戦後、日本輸出入銀行(現・国際協力銀行)に転じ、50代後半からは役員もやったそうである。

そんな立派な経歴の祖父だが、私にとっての祖父は60代で胃癌を患い胃を全摘したこともあり、会うたびによく寝ている人というイメージだった。

大学時代に祖父の貸家を貸してもらって隣に住んだのが転機だった。
祖父は、同じ法学部出身ということもあり良き相談相手になってくれた。本を貸してもらって書評をしたり、時には不良債権問題や小泉改革など当時話題になっていた政治課題に関して議論することもあった。こんなふうだから、当時、祖父はとても元気だった。

祖父がよく口にしてた言葉は「人生とは友人である」というものだった。私が大学の親友を家に連れて飲んだりすると非常に喜んだ。

最後に、未だに祖父の期待を裏切るような状態の自分を恥じつつ、今後お世話になった祖父の気持ちに応えられるよう生きていきたい。祖父の冥福を心より祈念して。