「日本軍閥暗闘史」田中隆吉(少将)著

第二次上海事変とかいろいろ当事者でもあった著者の本。戦後は東京裁判で検察側に協力したらしく、結構嫌われて、最後は鬱気味になって自殺未遂もしちゃった人らしい。中身は、帝国陸軍軍閥抗争と政治介入、結果として勝利した統制派と転向右翼によって、大東亜共栄圏なる実体からかけ離れた理念が提示され、国力面で誰もが勝てるとは思っていなかった米英を敵に回して戦争をしてしまったということが書かれてました。で、統制派が悪いと主張。

で、私の感想としては、物量面でダメダメだったのに間違った戦争をやったとよく総括されていますが、当時の統制派の思想は、「ドイツが英国を屈伏させ、米国は英国が屈服すればモンロー主義があるので妥協するだろう」というかなり調子の良い想定をしていたようです。ということで、結論からすると、情勢判断の失敗と戦略面で失敗したというのが真実な気がしてきました。

それはともかく、本筋は軍閥抗争がいかに当時の首脳部の判断力を弱まらせたかということだったんで、そういう面は確かに今も通ずるところがあるなと思う次第で。あと、軍部が政治介入すると転向右翼のような人間に利用されやすくなり、失敗するという事例。そうだな、イラク戦争の軍部と転向右翼であるネオコンを思い出しました。面白い視点かと。