異様なお祭り

恋愛シミュレーションゲームエミュレーターを友人が勝手にダウンロードしていた。懐かしいとは思った。男子校の高校時代にハマった某超有名作品である。正直、このゲームは良くも悪くも我々の青春みたいなもんだった。
当時、人によっては予備校に行って現実にアイドルを見出したり、巷に氾濫するグラビアアイドルを過剰に崇拝することで女性への憧れを癒している人もいたが、少々人と違うことをしたいと思ってこうしたものへ嫌悪を持ち、さらに予備校でなくZ会を中心にすえていた私にとって、一般の偏見はあってもこうしたゲームは非常に都合が良かった。受験勉強に追われる傍らそうした感覚を持っていた人は多かったらしく、同じクラスの人間のほぼ半数の20名以上がこのゲームをプレーして、特定キャラクターのファンになるという、一般からするとかなり気持ち悪い現象が起きていた。
特に、虹野沙希というキャラクターは男が憧れる理想型を絵に描いたような設定のキャラクターであったので、10人以上がハマっていた。私などはかなりの重症で、難しい数学の勉強をした後などはこのキャラクターの声が幻聴のように聞こえるぐらいだった。「根性で頑張ろう」「最後まで頑張るって約束したじゃない。○大受かるまで頑張るって約束したじゃない」等々・・・(爆)それはこのキャラにハマった人間に共通することだったらしく、クラスで会うと同じような経験を話して共感するという状態になっていた。ある意味、共通の異常経験を持つというお祭りがクラスの中に蔓延していた。同じ藤崎でも藤崎奈々子を信奉する少数は蔑まれ、藤崎詩織を意味する奴等が幅をきかせていた。
クラスの女の子人気ランキングをするのが普通なのだろうが、我々のクラスではキャラの人気ランキングで盛り上がっていた。ごく少数はこうした状態を揶揄していたが、クラスの試験成績上位10位が全て何かしら一般で言われるオタクっぽいことをしていた人間だったので、むしろこうした状態が煽られている状態だった。私自身もクラス3〜4位の成績を試験でとりつつ、一般的には偏見を持たれていることをやっているという矛盾を楽しんでいた。特に、菅原祥子が歌うナンカイイカンジという曲が耳につきハイテンションで受けた校内模試において、学年1位をとってしまったことが記憶に残る。友人にも成績が急に上がった奴がいて、「虹野パワー虹野パワー」と叫んでいたことを思い出す。とにかく、クラス全体が異様な祭りを体感しているようだったな。