〔野球〕稲葉篤紀 日本シリーズMVP

日本ハムが日本一になり、MVPは稲葉。入団以来、生粋の稲葉ファンである私にとって、これ以上ない出来事だった。
稲葉の勝負強さと真面目な努力家ぶりはまさに私の模範とするところであり、これまでの人生の糧となってきた。ファンになるきっかけは、熱狂的なヤクルトファンだった中学2年生の頃だ。外野レギュラーだった荒井と秦がチャンスで凡退する姿をよく見かける中で、一点差二死二塁という場面で起死回生のセンター前タイムリーを打ってくれた稲葉はラジオの前の私のヒーローだった。
その年、ヤクルトはイチローを抑えこんで日本一。先発5人が2桁勝利。打撃陣も強力。ヤクルトが一番強く、かつ上げ潮ムードだった。
そうした中で、それからの稲葉は、翌年3割を達成し、オマリーと並ぶ強打者として他球団に警戒されるまでになった。次の年は、20本塁打を達成し、日本シリーズでは優秀選手賞を獲得した。だが、その後は私が大学受験で苦労するのと歩調を合わせるがごとく、故障に苦しんだ。
私が大学2年の年に、稲葉は復活し、3割25本を達成。努力は人を裏切らないということを証明して見せた。紆余曲折あったが、稲葉は今年、全国区のスター選手になることができた。
新庄のパフォーマンスは分かりやすくて万人受けするし、私も嫌いではない。だが、稲葉のように人の目立たないところで努力し、着実に実績を積み上げる選手もいる。私は持って生まれたカリスマ性を要する前者よりも、後者を評価することこそが社会を奮い立たせ、多くの人を励ますものだと信じている。