政教分離について

首相は「職務ではない」として私的参拝を主張しているが、官邸で記者会見し、総理大臣と記帳している以上、公的性質を否定することはできない。
問題は憲法20条3項の規定に抵触するかどうかである。具体的には参拝行為が「宗教的活動」にあたるかどうかである。この点、愛媛玉串料訴訟の判例によれば、以下の3点を前提に判断することとされる。①信教の自由を確実にするための制度的保障としての政教分離原則②完全な分離は不可能(∵社会を規制、教育・福祉・文化保護助成する必要、不合理な事態が生ずる)③社会的・文化的諸条件に照らし、相当な関わり合いの程度を判断する。
特に相当な関わり合いの程度を以下の目的効果基準で判断することとしている。①意義・目的が世俗的か宗教的か②効果が宗教を援助助長圧迫促進するものか
首相の参拝は、戦没者を追悼する意図であると明確に表明しているので意義・目的は世俗的であるといえ、また靖国神社への参拝客の増加・関心が高まってはいるが、その多くが戦争や歴史への関心の高まりであり、特定宗教を援助・助長しているとは言えない。よって、首相参拝は社会的・文化的諸条件を照らし相当な関わり合いを越えるものとは言えない。従って、首相参拝は合憲であると言える。
<参考>
日本国憲法(昭和二十一年十一月三日憲法)(抄)
第20条3項 国及びその機関は、宗教教育その他いかなる宗教的活動もしてはならない。
http://law.e-gov.go.jp/cgi-bin/idxselect.cgi?IDX_OPT=1&H_NAME=%93%fa%96%7b%8d%91%8c%9b%96%40&H_NAME_YOMI=%82%a0&H_NO_GENGO=H&H_NO_YEAR=&H_NO_TYPE=2&H_NO_NO=&H_FILE_NAME=S21KE000&H_RYAKU=1&H_CTG=1&H_YOMI_GUN=1&H_CTG_GUN=1

ただ、神道との関わり合いが形式・意図によって深まっていると判断されれば、違憲の疑いもある微妙な問題であるとつけ加えておく。(「魂、祟りなど宗教的発言をする」、「神道の礼服を着る」など関わりあいを強めれば違憲の疑いが強くなる。)